お子さまが「やってはいけないこと」をしたときに、ママやパパは怒っていますか?
それとも、叱っていますか?
「怒る」と「叱る」という、似ている2つの単語には、どのような違いがあるのでしょうか。
実は、怒ると叱るには、明確な違いがあります。
今回は、育児に役立つ怒ると叱るの違いについて説明していきます。
「怒る」と「叱る」の違いとは?
2つの言葉は似ているようですが、実はまったく異なる意味合いを持っています。
- 使う「脳」が違う
- 誰のためなのか?対象が違う
- いつのことに対してなのか?対象の時間が違う
こちらの3つについて、それぞれ説明していきたいと思います。
比較①|使う「脳」が違う
まずは、脳の使いかたが違います。
では、どのような脳の使いかたなのでしょうか?
「怒る」のは右脳
怒るとは、感情が全面に出ていることをいいます。
これは、感情をつかさどる右脳が働いているからです。
もともと感情が優位な人はとくに、叱るよりもさきに怒るという感情が出る可能性があります。
「叱る」のは左脳
叱るとは、理性的に相手に淡々と伝えられることをいいます。
これは、記憶力や言語をつかさどる左脳が働いているからです。
大切なこと|「右脳と左脳」を思い出そう
もし感情的に怒る状態になりそうだったときは
「いま自分は右脳を使っているんだ」
ということを、思い出してみましょう。
意識的に
「いまは右脳が出てきているから、左脳で考えながら、叱ってみよう」
と思うだけでも、感情的になっている気持ちが落ち着いてくるかもしれませんよ。
比較②|誰のためなのか?対象が違う
誰のためなのか、という対象も違います。
では、対象となる人物についてみていきましょう。
「怒る」のは自分のため
怒るの場合、自分の感情を全面に出しているため、怒った本人は言いたいことをいってスッキリ!となっているかもしれません。
しかし、怒られたほうは違いますよね。
相手のためではなく、自分の感情のために怒っているのです。
「叱る」のは相手のため
叱るの場合、理論的な思考が優位に立っています。
「なぜこうなったのか?」
「つぎはどうすればいいのか?」
と相手の立場になって話すことができます。
そのため、相手のために叱っているのです。
大切なこと|「誰のために」なのかを考えよう
もし怒りそうになった場合は、一度気持ちを抑えてみましょう。
そして
「いま自分は、なにに対して怒っているのか」
「自分のため?相手のため?」
ということを考えてください。
ママやパパは、お子さまのためを思うあまり、感情が先走ってしまうこともあります。
お子さまの成長をうながすためにも、ぜひ意識的に考えてみましょう。
比較③|いつのことに対してなのか?対象の時間が違う
3つ目は、話している内容がいつのことに対してなのか、です。
では、いつの内容を指しているのか、について説明していきますね。
「怒る」のは過去
怒るのは、もうすでに起きてしまったことに対して、文句をいってしまう状態のこと。
もう終わっている内容に対して怒ったところで、その出来事が消えることはありません。
そのため、過去のことを掘り起こして注意してしまうのが、怒っている状態です。
「叱る」のは未来
叱るのは、相手の未来のことを考えて
「これからは、どうしたらいいのか」
という視点で考えられる状態のこと。
起こった出来事に対して
「今回の件で、なにを学んだか?」
「これから気をつけるには、どうしたらいいのか?」
と、未来を見据えた思考になるのです。
そのため、子どもの未来のことを考えて注意しているのが、叱っている状態です。
大切なこと|子どもの未来のため
いくら過去のことを怒っても、お子さまにとっては「いまの出来事」ではありません。
過去の出来事やいま起きたこと、これからのことなど、たくさんのことをいわれてしまうと
「どのことに対していっているの?」
と、お子さまは混乱してしまいます。
なにを注意されたのかがわからなければ、心に残らず、また同じことをくり返す可能性もあります。
せっかく注意しても、くり返されてしまっては、ママやパパも
「なんでまたやってるの…!」
と、嫌な気持ちになってしまいますよね。
ぜひ、お子さまがやってしまった出来事に対して、客観的にとらえながら、冷静に叱るようにしましょう。
保育や教育現場でも役立つ!叱るときのポイントとは?
育児をしていくうえで、できる限り、怒るのではなく叱るように心がけたいものですよね。
では、どのように心がけたらよいのでしょうか?
ここでは、保育や教育現場で実践されているポイントを5つ、紹介していきます。
育児にも役立つものなので、ぜひ参考にしてみてください。
ポイント①|その場ですぐに叱る
子どもがなにか「いけないこと」をしたときには、その場ですぐに伝えるようにしましょう。
後回しにしてしまうと、お子さまは覚えていない可能性があります。
覚えていなければ、反省することもできませんよね。
お子さまがきちんと理解するためにも、出来事が起きた「その場で」伝えるようにしましょう。
ポイント②|簡潔に伝える
お子さまに話すときは、短い言葉でシンプルに伝えるようにしましょう。
たとえば
「いまは、ご飯を食べる時間です」
「道路は危ないから、走りません」
のように、伝えたいことをわかりやすい言葉でいいましょう。
お子さまにわかってもらおうとするあまり、ママやパパは、たくさんの言葉を使って説明したくなるかもしれません。
しかし、たくさんの言葉を並べられると、お子さまは「どれが大事なのか」の取捨選択ができません。
いろいろな言葉が頭のなかに入ってきて、よくわからなくなってしまうことも…。
まずは、ママやパパが一番伝えたい大事なことに絞って、子どもにもわかりやすい言葉で伝えていきましょう。
ポイント③|目を見ながら低いトーンで伝える
お子さまと目線を合わせて、目を見ながら話すようにしましょう。
「いま話している内容は、あなたに向けて話している」
と、理解してもらうことが大切です。
また、大きな声で怒鳴ってしまうと、いくら相手のために叱っていても、怒っているように感じてしまいます。
お子さまにきちんと理解してもらうためにも、低いトーンで淡々と伝えるように心がけましょう。
ポイント④|他の内容を出さない
ママやパパが叱っているときに、ついつい、過去の話や他の話を持ち出してしまうことはありませんか?
「昨日もやってたよね?」
のように、いま起こっている出来事以外のことをいわれると、お子さまは
「いま気をつけなければいけないこと」
がわからなくなってしまいます。
お子さまが混乱しないためにも、他の話は出さないようにして
「いま気をつけて欲しいこと」
だけを伝えましょう。
ポイント⑤|その子自身を否定しない
お子さまの「行動」を叱るようにして、お子さま自身を否定しないようにしましょう。
たとえば
「こういう行動は、危ないからダメだよ」
という叱りかたはOKです。
しかし
「こんなことをした〇〇ちゃんはダメだね」
のように、人格を否定するような発言をしてはいけません。
自分に自信を失くしてしまい
「自分はダメな子なんだ…」
と思いつめてしまう可能性があります。
叱るときには、必ず行動に焦点をあてるようにしましょう。
まとめ|「子どものために」が大切
今回は、怒ると叱るの違いについて説明していきました。
違いは、大きく分けて3つあります。
- 使う「脳」が違う
- 誰のためなのか?対象が違う
- いつのことに対してなのか?対象の時間が違う
上記の点にくわえて、保育学校現場でも実際に使われている、叱るときのポイントを5つ紹介しました。
教育現場で働いていると、よく教員同士で
「それは叱っているの?それとも、怒っているの?」
と確認をすることがあります。
児童生徒を指導するうえで、自分では気がつかないうちに【怒っていないか】を確認するためです。
これは、育児をしていくときにも役に立ちます。
不安になったときには、一度立ち止まって、考えてみましょう。
冷静に、子どものためを思い、未来を見据えて、叱るように心がけましょう。